『弱法師』の俊徳は、とんでもない孤独の闇を抱えています。戦火で目が見えなくなった瞬間の光景を鮮明に覚えていて、「僕はこの世の終わりの景色を見たんだ、すごいものを持っているんだ」ということだけを頼りに、15年間も生きている。孤独感を隠すために親を奴隷のように扱い、言葉のDVみたいな長ぜりふが続くのですが、せりふを覚えながら、「なんでこんなひどいことを言うんだろう」と本当にしんどくなりました。
僕自身は闇もどろどろした毒気もまったくない、サラッとしたタイプです。2役とも寄り添って理解してあげるのは無理です。それでもなんとか理解しようと、戦争の映像資料などをネットで調べて、俊徳が最後に見た脳内映像をリアルに想像してヒントにしているところです。
■ドMなのかなと思う
――神宮寺と相対するのは、中山美穂だ。『葵上』ではかつて恋仲だった六条康子を、『弱法師』では俊徳を救済しようと手をさし伸べる、家庭裁判所の調停委員・桜間級子を演じる。
神宮寺:中山美穂さんは、僕の中では「テレビの人」という感覚でした。でも、かつての恋人という役柄に戸惑いは全然ないです。僕、話しかけていただいたら人見知りしないタイプなのですが、こちらからは「話しかけていい人かな?」ということを、しっかり観察してから動く慎重派なんです。中山さんは話しかけやすい方だと感じたので、これから少しずつ距離を縮めていきたいです。
舞台は同じ板の上に立つと絆が生まれる、独特の「濃さ」が好きです。舞台上でのやりとりも、お客さんのリアクションも、自分と役の関係性も、毎日違うから面白い。今はまだそんな余裕はないけど、毎公演、楽しんで挑みたいと思っています。
――最近は演技の仕事が続く。演じることは大変だが、壁にぶち当たるほど面白い。
神宮寺:僕はドMなのかなと思うんですけど、壁にぶち当たるほど燃えてくるんです。常に前回より高い壁を更新していきたい。壁は乗り越えるというより、何度もぶつかってぶち壊していくイメージです。やりたくなくてもやり続ける。やるっきゃないのよ、です(笑)。その方法しかわからない。
お芝居は中学生のころからやらせていただいていますが、右も左もわからない状態でやってきました。「DREAMBOYS」で(堂本)光一くんにはいろんなことを教えていただきましたが、今回の演出家の宮田慶子先生も、目が何個あるんだろうと思うくらい、一人一人をしっかり見てくださっていて。改めて、台本の読み取り方から、強弱だけじゃないせりふ回しの細かいテクニックまで教えていただいています。どんどん壁にぶつかって、どんどん成長していきたい。毎日が成長です。子どもと一緒です(笑)。