「コンビニ百里の道をゆく」は、52歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
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皆さんは「院内学級」をご存じでしょうか。入院中の子どものために学校教育を行うべく設置された学級です。通常の授業に加え、参加できる方は遠足や、社会科見学などの課外授業もされているそうです。
ローソンは、コロナ禍で課外活動ができなくなった子どもたちに、クイズなどを交えてコンビニ業界の仕組みや歴史などを学んでもらう「特別授業」を開催することになりました。児童・生徒さんからも商品・サービスに関するご意見などをいただき、将来の店づくりに役立てていきたいと考えています。
今月5日、横浜市立大学附属病院で、小学生1人と中学生3人が参加してリモートで1回目の授業を実施しました。子どもたちは大いに楽しんでくれたようです。他の病院でも実施予定です。
実はこの企画、最大1億円の予算内で社員から募集したアイデアを推進する社内公募「1億円チャレンジ(通称:億チャレ)」制度で採用されたものなんです。203組の応募の中から4組選ばれました。今回の企画はそのひとつです。
もともとローソンは、介護やリハビリ用品などの品ぞろえを強化した院内店舗「ホスピタルローソン」に力を入れてきました。2000年に1号店をオープン、いまでは339店舗を展開しています。
その中で、入院していても、お子さんなら絵本やおもちゃ、女性なら入院着もおしゃれなものなど、求められるのは「お買い物の楽しさ、喜び」だということを私たちは学びました。
今回の院内学級の特別授業も、その発想の延長線上にあります。入院中でも社会科見学の代わりのような感じで、学びの機会を楽しみ、笑顔のあふれる毎日にしてもらえたら。そのためにも「単なる物販の売店」以上の役割を、病院という小さなマチで、これからも果たしていきたいと思います。
竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
※AERA 2021年11月29日号