ジャーナリストの田原総一朗氏は、沖縄基地問題に関する最近の各紙の報道について「根本的に間違っている」と指摘する。
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11月25日、米軍普天間飛行場の辺野古への移設計画をめぐり、政府が申請していた設計変更を玉城デニー沖縄県知事は不承認とした。
政府は、埋め立て予定海域に広がる「マヨネーズ並み」とも言われる軟弱地盤を改良するための変更を求めてきたのだが、約1年半に及ぶ審査を経て、玉城知事は海底調査や環境保全策が不十分だと結論づけたのである。
そもそも政府の対応は不誠実で、理解しがたいものであった。
軟弱地盤の存在を早くから把握していながら公にせず、2018年12月に埋め立て土砂を海に投入する工事を始めてから、ようやく事実を認めたのである。
朝日新聞は11月27日付の「社説」で、「県民のみならず国民全体を愚弄(ぐろう)する行いだ」と厳しく批判し、今回の申請について玉城知事が「不確実な要素を抱えたまま見切り発車したことに起因する」と述べているのを、「政府を改めて厳しく批判したのは当然である」と指摘している。
だが、政府が行っているのは隠蔽(いんぺい)だけではないのだ。
朝日新聞の社説はこう続く。「予定海域の東端の護岸建設場所には、海面下90メートルまで軟らかい粘土層が続くことを示すデータがある。ところが政府は、そこから数百メートル離れた海底の調査をもとに、70メートルの深さまで改良工事を行えば足りると主張している」
それに対して玉城知事は、「調査はずさん極まりなく、全く信用できない」としていて、各紙とも、「政府と沖縄の対立が激化する。政府はもっと沖縄県民の訴えを聞き、沖縄県民の気持ちを理解すべきだ」と強調しているが、これは根本的に間違っている。
日本と米軍の間には日米地位協定があり、これはいわば米軍による占領政策の延長のような協定なのである。そして、日米地位協定では、日本政府には在日米軍基地を返還させる権利も、移設させる権利もないのである。日米合同委員会で米軍は、普天間飛行場の移設先を辺野古と決めていて、日本政府はそれを変更させることはできないのである。