やま彦が「かぼちゃ屋」を覚えたので聞いてくれと言う。冒頭のおじさんと与太郎の会話。「与太郎か、こっちに上がんな」「おじさん。なんか用か?」「用があるからよんだんだよ!」「よばれたから来た」。お馴染みのやりとりだ。やま彦がやるとこうだ。「与太郎さんですか。こちらに上がってくださいな」「おじさん。なにか御用ですか?」「用があるからよんだのです」「よばれたようなので来ましたよ」……なんでお互い敬語になってんだよ! 今まで散々失礼だったのに、落語やると登場人物が丁寧なのはなぜだ! 「俺、そんな風にやってた?(笑)」「違いますか?」「全然違うよ。お前、耳の中に尊敬表現に変換される機械でも埋め込まれてるのか?」「いえ、入ってないと思います(真顔)」。知ってるよ! なんだよ『思います』って。言い切れよ!
まだまだ書ききれない過去の逸話は「林家やま彦」で検索してみてください。この稽古の1カ月後、私に「スヌーピー」についての取材のお仕事が来ました! 恐るべし、やま彦マジック。林家やま彦26歳。大谷翔平と一つ違い。
春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。新刊書籍『人生のBGMはラジオがちょうどいい』(双葉社)が発売。ぜひご一読を!
※週刊朝日 2021年12月17日号