
「内戦」を危惧する識者らが懸念するのは、かつては社会の中で孤立した存在だった白人至上主義グループや民兵組織が、「自分たちが脇に追いやられている」という思いを抱くこうした人々に浸透し、勢力を拡大させることだ。
中間選挙では、現在民主党が過半数を制している上下両院をどちらが制するかが焦点だ。現時点では、3分の1が改選される上院は両党が過半数を激しく争う一方、全議席が改選される下院は共和党がやや優勢というのが、大方の選挙分析専門家の見方だ。
■11月8日投開票の中間選挙、トランプ氏の今後を占う
今回の中間選挙は、24年の大統領選挙出馬を示唆しているトランプ氏の今後を占う試金石にもなる。トランプ氏が支援する共和党候補の選挙結果が、今後のトランプ氏の影響力を大きく左右するからだ。
米議会では、連邦議会襲撃事件の真相究明に取り組む下院特別委員会の調査が大詰めを迎え、10月13日にはトランプ氏に証言を求める召喚状を出すことを決めた。中間選挙で民主党が下院の過半数を失えば委員会は解散必至のため、委員会は年内には報告書をまとめる方針だ。
ここで焦点となるのは、トランプ氏の責任をどう判断するか、さらにその後、司法省がトランプ氏を刑事訴追するかどうかだ。トランプ氏をめぐっては、ほかにも一族企業の脱税疑惑や機密文書の持ち出しについて捜査が続いている。
トランプ氏は一連の動きについて、自分をおとしめようとする政治的な「魔女狩りだ」と強く反発している。司法当局が刑事訴追に踏み切れば、本人だけでなく支持者たちも強烈に反発するのは必至だ。不測の事態が起きれば、「内戦」がさらに近づきかねない。
一方、現職のバイデン大統領も各地で演説し、政権の実績をアピールしている。
分断の解消を訴えるバイデン氏は就任以来、トランプ氏や支持者を直接批判することは最小限に抑え、基本的には無視するというアプローチをとってきた。だが、ここに来てトランプ氏と支持者批判にかじを切った。