photo 写真映像部・松永卓也
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「出戻り社員」を受け入れる再入社制度を導入する動きが、大手企業を中心に進んでいる。従業員が他社で培ったスキルを生かせるメリットがある一方で、再入社後の処遇が課題になっている。AERA 2022年10月31日号の記事を紹介する。

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 パーソル総合研究所の小林祐児上席主任研究員は、「戻りたくなる会社」に共通するポイントの一つに「離職時の面接」を挙げる。

「日本人は人間関係のもつれで辞職することが多いですが、そのマイナスイメージを解きほぐし、継続的にコミュニティーとして付き合ってもいいなって思えるかどうかは、最後の面接次第ともいえます」

 コロナ禍で加速したテレワークや副業解禁も、「出戻り」や関係継続を後押ししている。

「働き手は通勤時間がなくなることで副業に時間を割きやすい。そもそも急に辞められて困っている会社も多いため、自社で担当していたプロジェクトに引き続き副業の形でかかわってもらい、次の会社に籍は異動する、といった形態も広がっています」(小林さん)

■再入社後の処遇が課題

 ただ、課題もある。再入社後の処遇だ。大手企業の中には、長く働き続けている従業員の心情を気にして、離職時よりも一つ下の等級や処遇で復帰させる不文律を持つ企業があるという。小林さんらの2019年の調査では、1千人以上の企業に再入社した人の17.7%が以前より職位が下がり、32.9%の年収が下がっていた。

 小林さんは企業の人事管理を「校内マラソン」に例える。

「新卒未経験というスタート地点から『よーいドン』で走り出し、『同期』で固まりながら、あまり差のつかない長いランニングを経て、徐々にトップ集団から振り落とされていく。このシステムの中で出戻り入社は『一度抜けたマラソン』に戻るようなものです。校内マラソンに戻ってきた選手をトップ集団に復帰させてしまうと、これまで『一斉スタート』によって確保してきた競技としての正統性を揺るがしかねない、と人事部門は考えます。処遇低下の問題はその一端を示しています」

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