カトリーヌあやこ・漫画家&TVウォッチャー
カトリーヌあやこ・漫画家&TVウォッチャー
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 漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏が、「僕の姉ちゃん」(テレビ東京系 水曜25:00~)をウォッチした。

【画像】カトリーヌあやこ氏によるイラストはこちら

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 江ノ電鵠沼駅から徒歩圏内の古い庭付き一戸建てに暮らす姉弟。両親は海外赴任で留守らしい。

 姉・ちはる(黒木華)は輸入家電会社のOLで、弟・順平(杉野遥亮)は冷凍食品メーカーで働く社会人一年生だ。

 これといった事件が起こるわけでもない。ただ、日々それぞれ調達した夕飯を座卓に並べ、缶ビールを開ける。深夜にそんな姉弟の会話を覗き見しているようなドラマ

 社内に気になる女性がいる弟が「女の子のさ、ふと見せる自然な仕草っていいよね」などと口走れば、姉は容赦なく「順平、女に無意識など無い」とバッサリ切り捨てる。

 男と会話する時「アイロンかけながら~」とか、「いつも寄る花屋で~」なんて家庭的キーワードをさりげなく入れ込んでくる女は、「いけすかない」と断じる姉。

 そのくせ自分に仕事の電話が来れば、「今ほうれん草ゆがいていたところで~」とちゃっかり嘘を繰り出す、姉はやり手だ。

「女の本気度は毛でわかる」と姉は言う。「ヘアスタイル?」と、ピュア丸出しの弟に姉は告げる。「女には指の毛が生えないと思ってたとか?」

 弟が恋と女に抱く夢を、ひとつひとつ「リアル」でぶん殴っていく姉。けれどこの弟、姉ちゃんに「うぜぇ」とも「うるせぇ」とも言わない。

 たとえ「あんたに彼女ができても、私たぶんそのコ嫌い」なんて言われたって、「やめろよ」と気弱な返しをする程度。

 そう、彼は真夜中に女の本音をひたすら聞いてくれるためだけに存在する、「イマジナリー弟」としか思えない。

 姉が酔って帰ったら介抱する。パックしてる顔見ても「ゲッ」て言わない。進んで掃除をし、自分でゴミを捨てる。お茶をいれてやればきちんと「ありがとう」と言う。

 汗臭くもなく男臭さもなく、エロ雑誌の袋とじなど開けたこともなさそうな、まっさらで洗剤のCMみたいな弟。

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