冬に懸念される感染の波に備えるため、従来株とオミクロン株のBA.1に対応したワクチンの接種が始まった。新ワクチンの実力と副反応は、従来のワクチンと比べてどう変わったのか。AERA 2022年10月3日号から。
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新型コロナウイルスの変異株オミクロンにも対応したワクチンの接種が9月20日、始まった。使われているのは、ファイザー社とモデルナ社の2種類のワクチンだ。
従来のワクチンは、世界的大流行が始まった初期のウイルスに対する抗体ができるように設計されている。オミクロン株以前の変異株は、ワクチンの効果に大きな変化はなかった。しかしオミクロン株は変異の数が多く、ワクチンの効果が低下した。
■対象はBA.1系統
新たに特例承認されたワクチンは、流行初期のウイルスだけでなく、オミクロン株に対しても抗体ができるように設計されている。二つのタイプのウイルスに対応するので「2価ワクチン」と呼ばれる。複数のタイプのウイルスに対応する多価ワクチンは初めてではない。インフルエンザワクチンは4価だ。
オミクロン株には、第6波の原因となったBA.1系統や、現在、流行しているBA.5系統など、複数の系統がある。特例承認された2価ワクチンの対象はBA.1系統だ。
ファイザー社の臨床試験(治験)では、従来のワクチンを3回接種し終えた55歳超の341人を対象に、4回目接種として従来のワクチンあるいは2価ワクチンを打った。接種1カ月後にBA.1を攻撃する「中和抗体」がどれぐらいできているのか比較した。従来型ワクチンの人に対し、2価ワクチンの人は、1.56倍多くできていた。
モデルナ社の臨床試験は、従来のワクチンを3回接種し終えた18歳以上の594人を対象に行われた。4回目接種の28日後の中和抗体は、4回目に従来のワクチンを打った人に比べて、2価ワクチンを打った人は1.75倍多かった。
■副反応はおおむね同じ
臨床試験における接種後の副反応は、ファイザー社製2価ワクチンの場合、疲労感(49.2%)や頭痛(33.6%)、筋肉痛(22.3%)、悪寒(13.0%)など全身の症状が60.5%の人に起きた。一方、痛みなど接種した部位に局所的な副反応は59.5%の人に起きた。
モデルナ社の臨床試験では、全身の副反応が起きた人は70.3%、局所的な副反応は79.4%の人に起きた。