「コンビニ百里の道をゆく」は、53歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
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私たちは日頃、さまざまなメディアから情報を得ています。紙の新聞や雑誌、ネットのニュース、テレビなど。即時性ならネットですし、テレビも気軽に情報が得られる媒体ですよね。ただ、私がじっくりと考えたいときに読むのは、紙の新聞や雑誌です。
例えば、朝起きたら毎日1時間くらい、数紙の新聞に目を通します。1面から2面、3面、社説までいけば、いまの社会の課題は何か、それに対する新聞各社の意見はどんなものかが把握できます。
ネットに比べ、新聞やテレビは「オールドメディア」と揶揄されることもあるようです。しかし、紙面を広げて読むことで、社会に存在する様々な意見とそのポイントがつかみやすいんです。一覧性と総覧性が担保されているのは新聞の利点だと思います。一方、テレビの映像の説得力は百聞は一見に如かずです。
そのメディアがオールドなのかニューなのか。大事なのはそこじゃない、とも思います。私は2005年から10年までの5年間、三菱商事の広報部に在籍して報道対応とブランディングを担当していました。そのとき感じたのは、メディアで大事なのは情報はもちろんですが、その裏側に個々のジャーナリストの方々がいるということです。
彼らは社会を代弁している存在です。社長という立場になった今はなおさらですが、自分の属している会社が社会の常識の中で正しい方向に進んでいるか。社会から必要とされる存在になっているか。そういった自分の立ち位置や進むべき方向を「対話しながら」確認させていただける、それが私にとってのメディアです。オールドかニューかという媒体の種類にかかわらず、これからも「社会を代表して、社会の課題に切り込むんだ」という矜持を持っているメディアの方々と、コミュニケーションしていけたらと考えています。
竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
※AERA 2023年1月30日号