ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、「ワイドショー」について。
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かつてのワイドショーは主に芸能ゴシップや皇室の話題を中心に、その時々の事件・事故を、いわゆる報道とは違うやり方で下世話にしつこく掘り下げるものでした。しかし時代の移り変わりとともに、ワイドショーで扱うトピックも変化し、いつしか社会的・政治的問題を「ワイドショー的切り口で」というのが主流になりました。
90年代中盤に起きた阪神・淡路大震災とオウム真理教関連の事件が、そのきっかけだと言われていますが、さらにはその数年前に大きな話題となった二つの宗教にまつわる騒動の影響も大きかったと記憶しています。そのひとつが92年の旧統一教会が催した合同結婚式です。国民的なスターでもある桜田淳子さんがそれに参加したこともあり、一気に統一教会の存在は世間の知るところとなりました。「マインドコントロール」なんて言葉が浸透したのもこの時でした。
これを機にワイドショーの何が変わったかと言えば、いちばんは「その筋の専門家と呼ばれる人たち」が、連日コメンテーターとして出演するようになったことではないでしょうか。新興宗教関連に詳しい人、災害評論家、軍事評論家、そして弁護士など、「専門家」からお茶の間の常連になった人は数知れず。現在も活躍している江川紹子さんはオウム事件によって知名度を上げた筆頭株ですし、最近ではコロナ関連で引っ張りだこ状態の岡田晴恵さんなどがいます。
そして2022年、30年ぶりにワイドショーの主役として躍り出た旧統一教会問題で、当時の「専門家」たちもまた続々とリバイバルしている様子。霊感商法に明るい紀藤弁護士や、ワイドショー専門家から国会議員にまで上り詰めた有田芳生さんなど、ここへ来て再び「主戦場の人」として姿や名前を見るにつけ、ワイドショーがどんどん下世話でなくなっていったあの頃を思い出している次第です。