AERA 2023年1月23日号より(イラスト 小迎裕美子)
AERA 2023年1月23日号より(イラスト 小迎裕美子)

「尊敬する人を見本にすることは、自分を律し、パフォーマンスを向上させるうえで非常に合理的です。現代まで名が残る戦国武将は、滅亡した勢力だとしても、何らかの成功者でしょう。また、人間はどうすればいいかわからないと強く不安を感じます。憧れの武将の生きざまを指針にすれば、不安要素が減り、決断の助けにもなるはずです」

 ただ、前述の吉継と三成のエピソードしかり、逸話には史実かわからないものも多い。最新の研究で広まっている人物像が覆されるケースもある。それでも、堀田教授はこう続ける。

「目標が現代の人間だと、言動を見て幻滅するということが起こりやすい。一方、戦国武将はそれがありません。史実は変わらないし、逸話をもとに理想の人物像を見いだすこともできます。最新研究で新事実がわかることがありますが、歴史小説や大河ドラマで感動したインパクトにはかなわない。『推す』対象として適していると言えます」

 新潟出身の会社員男性(50代)の人生訓は「第一義」。「この上ない最高の心理」を意味する仏教用語で、上杉謙信が掲げた言葉として知られる。

■迷ったときは「義」

 戦国最強ともうたわれた謙信は、何より「義」を重んじる武将だとされてきた。家督を継ぐ際は病弱な長兄の養子となり、実子はもうけなかった。武田信玄と対立すると、「私怨はないが、(助けを求めてきた)信濃を救うために戦う」と宣言。後世に脚色されたものだが、その信玄が今川・北条による塩の禁輸で苦境に陥ると、「敵に塩を送った」逸話も残る。男性は言う。

「陰謀詭計が渦巻く時代、実際は義だけで生きることはできなかったでしょう。それでも謙信は地元の英雄で、小さなころから信義を重んじた逸話を何度も聞いてきました。自分も迷ったときは『義』を第一に考えます」

 バブル景気後の長引く不況が下町を覆った90年代の終わり、男性が勤めていた工場は破綻寸前に追い込まれた。給料は遅配し、同僚も次々にやめた。

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