
カラスのねぐら近くで無農薬野菜を生産・販売している石垣園芸ではこの数年、カラスの被害に遭い続けている。収穫前の作物を食い荒らされたり、畑を踏み荒らされたりの日々で、カラスが好むトウモロコシに至っては生産をやめている状態だという。
「夜になるとねぐらに帰ってくるから、このあたりはカラスだらけですよ。夜通し鳴くから、うるさいのなんの。作物の被害もひどい。ウチとしても威嚇したり、超音波を出す装置も使ったけど、頭がいいから慣れちゃうんだよ。安全だってわかると、何やっても関係ない。今は作物を囲うようにテグスを張り巡らせて防いでいるが、これが一番効果がある。ただ、われわれ収穫する側も畑に入りにくくなるのが難点だけど」(石垣園芸の代表の男性)
夕方、まだ明るいうちに“カラスのねぐら”とされる森に行ってみると、カラスたちが木陰で涼んでいる様子が見られたが、駅周辺や住宅街よりは多いかなという程度。しかし、夕焼け空が赤から紫に変わるころから、少しずつ数は増え始めた。群れとなり、ねぐらに戻ってくるカラスが樹上や電線に列をなし始めたのは暗くなってから。鳴き交わす声も驚くほど大きい。

石垣園芸ではカラス以外にも野生のハクビシンによる作物被害があり、捕獲の許可を取った。カラスについても駆除したいが、許可が必要なうえ自費での作業となるという。「被害は少なくない。駅周辺や住宅密集地だけではなく、ねぐら近くでの対策を市にはお願いしたい」(前出の男性)と聞かされていたが、大変さが実感できた。
取材を終えた帰り道、駅でかぶっていた記者の帽子にカラスの糞が落とされていたのに気づき、対策が必要との思いをさらに強くした。
※週刊朝日 週刊朝日オンライン限定記事