英エコノミスト誌を発行しているエコノミスト・グループの2017年のアニュアルレポートにはこんな文言がある。
この記事の写真をすべて見る<グーグルとフェイスブックが世界のデジタル広告の6割をとっている。アメリカ市場に関してみれば、ここ数年は新規のデジタル広告費の99パーセントはこの二社にいく>
だから、英エコノミストは、グーグルやフェイスブック、ヤフーなどのプラットフォーマーに記事は出さず、1カ月からの定期購読しか提供していない。
そしてこの英エコノミストにデジタル購読のシステムを提供しているのが、PIANOという会社(本社 アムステルダム)である。ニューヨーク、東京、オスロ、ベルリン、ミュンヘン、シンガポール、ブエノスアイレスなど世界各都市に拠点を持つ。日本でも、週刊文春などの電子有料版のシステムを提供し、グーグル、フェイスブック、ヤフーというプラットフォーマーに頼らないメディア独自のデジタル購読システムを陰で支えている。
このPIANOを立ち上げたCEOのトレバー・カウフマンにインタビューする機会を得た。トレバーが、ネット上で新聞や雑誌の電子版を、月極め購読でとってもらうことを支援するビジネスを始めたのは、2012年のこと。そのトレバーの軌跡をたどることが、メディアの生き残りについて重要な示唆を与えてくれるので、今回はその話をしよう。
トレバーは、メディアの街ニューヨークで育った。父親は広告マンだった。昼食のマティーニで仕事をとってくる生き馬の目を抜く広告業界で父親は仕事をし、トレバー自身も、WPPという世界最大の広告代理店に勤めていた。
2010年代初頭、WPPでインターネット広告の新しいシステムができた。それは、クライアントの広告を様々なホームページに、瞬時にコンピューターがデリバリーするシステムで、すでに興隆をほこっていたグーグルのアドセンスに対抗したものだった。
しかし、トレバーはこのシステムを見た時、こう思ったのだった。これじゃあ、いったいどのメディアに広告が出るのか、クライアントは全くわからないではないか。