人が死んだ場合には、死亡診断書と死亡届が必要になる。死亡届を出すのは通常遺族、そして死亡診断書は担当医師にゆだねられる。

 死因を判断して診断書に書く医師もたいへんだが、はっきりしない場合は、老衰なり何なりの名前が必要になる。その分類はWHOによって決められ、全世界で使用されているという。

 文句をいってみてもはじまらないが、老衰とは何と冷たい言葉だろうか。「自然死」というのは死因の名称にはならないというし、いっそ「不明」とか「なし」の方がすっきりする気もする。

 人が死ぬということは、面倒なものだ。死んだという細かい証明が書類として必要になる。

 そのことを考えるとますます「○○歳」という実年齢がいかに無意味でむなしいものか。やはり自分の年齢は自分で決めるしかない。

下重暁子(しもじゅう・あきこ)/作家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。民放キャスターを経て、文筆活動に入る。この連載に加筆した『死は最後で最大のときめき』(朝日新書)が発売中

週刊朝日  2023年1月27日号

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下重暁子

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下重暁子(しもじゅう・あきこ)/作家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。民放キャスターを経て、文筆活動に入る。この連載に加筆した『死は最後で最大のときめき』(朝日新書)が発売中

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