経済学者で同志社大学大学院教授の浜矩子さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、経済学的視点で切り込みます。
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社会人学生さん向けの授業でSDGsを取り上げた。ご存じ、「持続可能な開発目標」である。2015年に国連が打ち出した。17項目にわたって、「持続可能性」保持のために人類を挙げて追求すべき目標を掲げている。
SDGsのプロモーショングッズの一つに、「カラーホイール」がある。上記の17項目のそれぞれに割り振られたカラーアイコンを輪状に配置したピンバッジである。ある時から、これが日本の巷(ちまた)で大流行(はや)りとなった。
この現象について、拙著で「SDGsバッジをまるで社章のように襟につけて『意識高い系』振りを誇示している」ビジネスマンがやたらに多くなっていると書いた。
授業の予習材料としてこの文章を読んでもらった。すると、一人の学生さんが面白い情報を共有してくれた。ある時から、この学生さんも「カラーホイール」が目につくようになった。その時点でこのバッジの何たるかをまだ知らなかった彼は、「この社章をしている人が多いなぁ。こんなに従業員がたくさんいるのは、どの会社だろう」と考えた。そして、その企業の探索に乗り出した。