
重症化を防ぐ効果が期待される2種類の経口薬「モルヌピラビル」と「パクスロビド」。どんな薬なのか、それぞれの特徴と注意点を見て行こう。AERA 2022年1月17日号から。
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重症化リスクの高い軽症や中等症Iの感染者の重症化を防ぐ薬として新たに期待されるのが飲み薬だ。欧米ですでに承認された経口薬が2種類ある。
■リスク30%下げる
このうち、米メルクの「モルヌピラビル」は12月24日、国内でも特例承認された。政府は同社と160万回分の供給を受けることで合意している。
対象は、高齢だったり持病があったりして重症化リスクの高い18歳以上。軽症か中等症・の感染者が対象だ。
臨床試験(治験)では発症から5日以内に服用を始め、1日2回、5日間の服用で、入院や死亡のリスクを約30%下げる効果があった。
モルヌピラビルは、新型コロナウイルスの遺伝情報、RNAが複製される時に必要な酵素を標的にする。ウイルスが増殖する時にはRNAも複製されるが、その際にエラーを起こさせ、ウイルスが増殖できずに死滅することを目指している。
■5日間服用すること
ただし、遺伝情報に変異を起こす働きがあるため、胎児に影響を及ぼす可能性があるとして、妊婦や、妊娠の可能性があり、避妊していない女性は服用の対象外とされている。
また、モルヌピラビルは、ウイルスの変異株を増やすのではないかという専門家の指摘がある。もともと、ウイルスRNAの変異を誘発させる働きがあるからだ。この点について、藤田医科大学の土井洋平教授(感染症学)は、飲み方が重要だと指摘する。
「決められた5日間、服用すれば、ウイルスはほぼ死滅することがわかっているので、問題となるような変異株が増える可能性は低いと考えられます。ただし、実際に大勢の人が服用を始めると、途中で飲むのをやめてしまう人も出てくるかもしれません。変異株を増やさないためにも、処方された場合は5日間きちんと服用していただきたいです」