ツイッターはドーシー氏らが06年に創業した。140字以内で発信できる手軽さから利用が広がり、広告を閲覧できる利用者数(1日あたり)は世界で約2億人いる。だが、FBを傘下に持つメタ(グループの1日あたり利用者約28億人)などに大きく水をあけられており、収益面での課題も多い。

 ブロックの時価総額は約750億ドル(約8.6兆円)で、ツイッターの2倍以上ある。欧米メディアでは、ドーシー氏は収益が低い上に批判が絶えないツイッターを「捨てて」(英ガーディアン紙)、仮想通貨の分野に集中したかったという見方が広がる。

 それでも、ツイッターのネット上の言論空間としての存在感は大きい。21年1月の米議会襲撃事件後は、トランプ前大統領のアカウントを「永久凍結」して、保守派からの批判が強まった。ホーゲン氏の告発後、米議会では大手IT企業に対する規制強化の機運が超党派で高まっている。新体制も、こうした課題に直面することになる。

 ザッカーバーグ氏が力を入れる仮想空間は、これまでのネット空間をはるかに超える膨大なデータが支える世界だ。従来のスマホのネット空間の問題が片付かないうちに、圧倒的な資金力をもとに新たなビジネスに突き進もうとしている。仮想現実(VR)上のゲームでは、すでにハラスメントなどの被害が報告されている。

「規制の強化は長い時間がかかり、あまり楽観的には考えていない」

 米カリフォルニア州立大学バークリー校で、マルチメディアジャーナリズムを教えるロバート・フェルナンデス教授はそう話す。「唯一の希望は、インターネットに囲まれて育った若い世代だ。彼らはよりしなやかで、過激な変化も受け入れる考えがある。彼らを議論に巻き込んで、耳を傾けるべきだ」

(朝日新聞サンフランシスコ支局長・五十嵐大介)

AERA 2022年1月17日号より抜粋