
18年春、英国の政治コンサルティング会社「ケンブリッジ・アナリティカ(CA)」に、FBから最大8700万人の個人情報が流出していたことが発覚した。CAは16年の米大統領選で、トランプ前大統領の当選に尽力したとされる。政治広告の扱いを巡っても、FBの対応は消極的だった。ツイッターのジャック・ドーシーCEOは20年の米大統領選の前年、全世界で政治広告を禁止する方針を表明した。だがFBはその後も容認し、新たな政治広告を禁止したのは、大統領選前の1週間だけだった。
CA元幹部のブリタニー・カイザー氏は20年の筆者の取材に、16年の米大統領選でFBが最も強力なツールだったとしたうえで、「ザッカーバーグ氏は、政治家が規則や法律に従うことなく好きなことを発言する行為を認めている」と話していた。
前出のカークパトリック氏は取材に対し、FBがもたらした悪影響は「当時考えていたより悪い」と話す。
「ソーシャルメディアを操作することで、多くの国で民主主義が危機に陥っている。これらはとても深刻な問題で、ソーシャルメディアの多くの良い側面を上回る」
カークパトリック氏は、FBが抱える問題の核心は、ザッカーバーグ氏に権限が集中しすぎてガバナンス(企業統治)が機能していないことだと指摘する。「彼の知性やリーダーシップの能力はとても尊敬している」と言いつつも、「彼は他人に対する共感が欠けている。ほかのすべての価値よりも成長を優先して経営する手法に、正直驚いている」という。
世界の大手SNSを巡っては昨年、もう一つ象徴的な動きがあった。
「もう聞いているかわからないが、ツイッターを辞めた」
21年11月、創業者のジャック・ドーシー氏はツイートでCEO職を辞めることを明らかにした。ドーシー氏は決済サービス「ブロック(旧スクエア)」のCEOも務めており、「二足のわらじ」ではツイッターの経営に集中できていないと批判が出ていた。
彼は現場に干渉しない「放置型」の経営スタイルで知られた。強力な権限を持つザッカーバーグ氏とは対照的だ。「創業者の影響から離れ、自立できることが企業にとって重要だ」。ドーシー氏は退任時の声明でそう述べた。
■楽観視できない規制強化 SNSの未来はどこへ
そのドーシー氏は、これまでも関心を示してきた仮想通貨の分野に力を注ぐ姿勢を鮮明にしている。スクエアは21年12月、社名を仮想通貨の基盤技術「ブロックチェーン」にもちなみ、「ブロック」に変更すると発表した。