ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、「50年目の節目」について。
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今年もどうぞよろしく。近所の新国立競技場を囲うフェンスには、いまだに「TOKYO 2020」の巨大文字が燦然と刻まれており、ずっと時間を止められている気分になります。これもひとつのコロナによる弊害なのかもしれません。
年が明けてもどこかピンと来ない2022年を実感するには、アイドル花の82年組(中森明菜・小泉今日子・シブがき隊・原田知世・石川秀美・早見優・三田寛子・あみん・安全地帯)が今年デビュー40年を迎えるという事実を噛み締めるのが良いでしょう。ちなみに東北・上越新幹線も開業40年を迎えます。500円硬貨が発行されたのもこの年です。
何かにつけて82年組を規準に年を数えてしまう世代ですが、もちろん周年記念は彼らだけではありません。実はメンツ的にもっとエグいのが72年組(今年50周年)です。ユーミン、矢沢永吉(キャロル)、井上陽水、谷村新司(アリス)、五輪真弓、郷ひろみ、西城秀樹、森昌子……。今なおあらゆるジャンルのパイオニア的存在として君臨し続けている人ばかり。これだけの才能を輩出したのはおろか、それを受け入れ咀嚼した当時の世の中のエネルギーもまた凄まじい。
世相的には、札幌で冬季五輪が開催され、あさま山荘事件が起こり、アメリカ領だった沖縄が本土復帰。さらには田中角栄内閣が発足し、日中国交が正常化され、それを記念して上野動物園にパンダが来日した年です。まさに戦後復興から新時代への突入を象徴するような出来事が目白押しの一年だったと言えるでしょう。あれから50年という側面をもってすれば、2022年がいかに節目の年であるかが身に滲みます。明菜やキョンキョンどころではないかもしれません。