2018年に安倍晋三首相が3選されたとき、安倍首相は「憲法改正をしたい」と強く訴えたが、安倍首相が頼みとしている自民党の幹部たちに確かめると、誰もがホンネでは、憲法改正は無理だと捉えていることがわかった。
そこで、私は安倍首相に、憲法改正はすぐには無理だから、まず日米地位協定を改定すべきだ、と本気で話した。くり返しになるが、日米地位協定を改定しないと移設問題は決着しないからである。安倍首相は、日米地位協定の改定を実現するとはっきり答えた。
ところが、20年5月に外務省の幹部が私に「実は、米国の国防総省の反対で、日米地位協定の改定は困難だ」と話した。なぜ、イタリアやドイツは改定ができるのに日本はできないのか、外務省幹部に問うと「イタリアやドイツはNATO(北大西洋条約機構)に加盟しているからだ」と答えた。
池田勇人内閣以後、安全保障を米国にゆだねている日本は、日米地位協定を改定できないのである。しかし、オバマ、トランプ両大統領が、パックスアメリカーナ(米国による平和)を放棄して、日本は主体的な安全保障を構築しなければならないことになった。日米地位協定を改定するチャンスでもある。
田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数
※週刊朝日 2022年2月11日号