
ワールドカップ(W杯)でスーツ違反による失格は日常茶飯事だ。失格経験のある内藤は検査時のやりとりをこう語る。
「股下なら、ほとんどの選手が上げるように工夫して、登録した長さより短くならないようにしている」
■追い上げ実らずに4位
これまでは五輪や世界選手権直前のW杯で失格者が出て、それが運営側の「警告」と選手は受け止める。昨季も世界選手権前のW杯でノルウェーの実力者がスーツ違反で失格となった。
今回のスーツ違反をどう見ればよいのか。五輪憲章が掲げるフェアプレーにもとるものなのか。内藤はこう受け止める。
「大量失格の事例はたまにある。スキー・ジャンプのネガティブな一幕が五輪という大舞台で見えてしまって残念」
体格の変化や生地の劣化が違反につながった可能性もある。
ただ、それが五輪で起きただけに衝撃は計り知れない。日本は追い上げも実らずに4位。ジャンプ競技はマイナーゆえにメダル獲得が競技人生にも影響する。高梨が失格していなければ表彰台の可能性が大きかった。
「ある意味(運営側は)勇気のある失格判定。良くも悪くも試合を壊してしまった」(内藤)
後味の悪さが残る五輪初イベントとなった。(朝日新聞記者・笠井正基)
※AERA 2022年2月21日号