■久本雅美、大久保佳代子との違い

 さらに、いとうの人柄がよくわかるエピソードがある。

「以前、いとうのマネージャーが明かしていたのですが、『24時間テレビ』でチャリティーランナーを務めたときのエピソードが印象的でした。番組でいとうがフルマラソンと同じ距離を走った際、最後の5kmだけマネージャーも一緒に走ったのですが、その時マネージャーは事前練習をやりすぎて膝を痛めていた。それをいとうも知っており、ゴールした際、疲労困憊(こんぱい)にもかかわらず、『膝大丈夫?』とマネージャーのことをまず気遣ったというのです。彼女は親しみやすさが人気ですが、その裏ではプロ根性もあり相手を気遣える人柄も持ち合わせている。加えて、うまく路線変更もできた。そうしたところが相まって、息の長い活躍ができているのでしょう」(前出の編集者)

 お笑い評論家のラリー遠田氏は、いとうあさこについてこう評する。

「明るく爽やかで、体を張ったヨゴレ仕事をしていても、どこか品の良さを感じさせる――そんなアラフィフ世代の女性タレントがほかにいないからこそ、いとうさんの存在感が際立っているのだと思います。似たようなポジションで言うと久本雅美さんや柴田理恵さんがいますが、どちらも彼女より一世代上にあたるので、ターゲットとなる年齢層が少しずれています。同世代では大久保佳代子さんが似たようなキャラクターですが、大久保さんには独特の“性欲が強いキャラ”があるので、いとうさんとも少し路線が違います。そういう意味で、彼女が築いた現在のポジションは唯一無二のものであり、今後も長く活躍が期待できると思います」

 もちろん、トークやロケの面白さも折り紙付き。若手が続々と台頭しているお笑い界だが、いとうが世代交代の波に飲まれることはなさそうだ。(丸山ひろし)

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丸山ひろし

丸山ひろし

埼玉県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務し雑誌編集業務に従事。その後ライターに転身し、現在はウェブニュースや、エンタメ関連の記事を中心に執筆している。

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