高梨沙羅さんもそうだった。二センチ着衣が大きくて失格! どんなに腹が立ち、口惜しいだろうに、他人への感謝を忘れない。優等生なのだ。それを見ている私たちも辛い。彼女の怒りが伝わるだけに。
無理をしないで自然体でいい。他人を気にせず、もっと自分に忠実でいい。羽生結弦さんの会見も、必ず質問者に「ありがとう」というのが痛々しかった。
体調の悪さをしばし忘れられたのはカーリングのロコ・ソラーレ、勝っても負けても、いつも通り「そだね」「いいよ」。しばし憂うつを忘れた。
インタビューでは平野歩夢さん。ドライな若者の言葉で、他人に気を使わないところが好きだ。無理はよくない。精一杯自分の力を出せば、見ている私たちは元気づけられる。勇気や感動を与えたいなどと思わないこと。そして傷ついたら自分でなめてやろう。
下重暁子(しもじゅう・あきこ)/作家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。民放キャスターを経て、文筆活動に入る。この連載に加筆した『死は最後で最大のときめき』(朝日新書)が発売中
※週刊朝日 2022年3月4日号