日本は、古くから渡来してきたものを吸収し変化させながら、独特の文化として昇華させてきた歴史がある。古代から続く風習と思っていたものが、意外と歴史が浅かったり、渡来文化だったり、すでに日本で独特の変化をしているので本来の姿がわからなくなっていたりする。
●日本文化に残る異文化合流
例えば、合羽(カッパ)という漢字まである防水着は、元はポルトガル語の「capa」、英語では「cape」を意味している。つまり、日本ではコートのうちの防水性のあるものだけを合羽と呼ぶが、本来は防寒着すべてを指す単語だったのである。不思議なことに日本に棲む妖怪・河童と相まって日本中に広まっていった。
神仏の世界では、この習合がどんどん進んでいった。仏教や道教、陰陽道など中国を介して日本に入ってきた宗教は多々ある。よくよく見てみるとユダヤ教やキリスト教、ヒンズー教、バラモン教などの影があちらこちらにある。日本に入ってきた段階で習合していたものもあるし、日本で変化していったものもある。
●七福神で唯一の日本で誕生した神
お正月によく見る「七福神」だが、起源は室町時代頃ではないかと考えられている。これが一般庶民にまで広がったのは、江戸時代とされていて、お正月に神棚に祀られる縁起物の絵として好まれるようになった。七福神の顔ぶれは、地方や寺社によってまちまちだが、凡そ、恵比寿・大黒天・毘沙門天・布袋尊・寿老神・福禄寿・弁財天の7柱となっている。このうちの何柱かが、吉祥天、猩々、宇賀神、鍾馗などと入れ替わることがあるが、「恵比寿・大黒天・毘沙門天」の3柱は入れ替わることはほぼない。この3柱は、七福神の起源とも言えるもので、始まりは延暦寺の台所にあると言われている。
●えびすさまの起源とは
さてこの七福神だが、1柱を除き、すべてが海外に起源を持つ神仏である。仏教神だけでなく、道教、ヒンズー教などの神であるが、その説明は長くなるので、今回は唯一日本由来の神である「えびすさま」についてご紹介してみたい。
えびすを表する漢字は多い。恵比寿・恵比須・恵美須・蛭子・夷・戎・胡など寺社により表記が異なる。山手線の駅名は恵比寿だが、この字を使った神さまを祀る社はあまり多くなく、むしろ「蛭子」「戎」などの表記の方がよく見る。
漢字をみるとよくわかるが、この日本由来であるえびす神のいわれは、外来の神という意味である。海の向こうから渡来してこられた神、ということから海の神、漁業の神、水の神と呼ばれていて、このためかえびす像の多くが、釣竿を持っていたり、鯛を抱えていたりする。