モーターやバッテリーを積載する「エコカー」にモデルチェンジした1969年製のロンドンタクシー(photo 両備テクノモビリティーカンパニー提供)
モーターやバッテリーを積載する「エコカー」にモデルチェンジした1969年製のロンドンタクシー(photo 両備テクノモビリティーカンパニー提供)

独学でシティをEV化

「自動車メーカーが環境重視にシフトしていくなか、アフターマーケットでも社会貢献につながる取り組みができないかと考え、コンバートEVが浮かびました。国内でガソリンは作れませんが、電気は生産できます。排ガスを出さないのも環境面にプラスだと考えました」

 当時、EVはほとんど普及していなかった。古川さんは米国から書籍を取り寄せたり、EVの普及活動に取り組む市民団体「日本EVクラブ」に参加したりして独学で研究を重ねた。試行錯誤の末、必要な部品をすべて自前で調達し、2009年にホンダの「シティカブリオレ」をEVにコンバートした。

「ゴルフカートの延長線上と言っていいぐらいの性能です。鉛バッテリーで充電1回あたりの走行距離は約30キロでした」(古川さん)

 この1号車は話題になり、ユーザーの問い合わせも相次いだ。古川さんはこれまでに50台以上の改造を手掛け、バッテリーやモーターの性能アップに加え、急速充電対応も進め、市販のEVと同等の技術を磨いた。

 主な顧客は会社経営者や医師といった富裕層。外車やヴィンテージカーを趣味として保有している人たちだ。EVへの改造価格は500万~1千万円で、半年かかる。部品はほぼすべて海外から調達しており、コロナ禍で供給が逼迫(ひっぱく)している今は、新規の受注を調整している。

 そんななか、古川さんは最新性能を追求し続けている。主流のリチウムイオンバッテリーよりも発火リスクが低い中国製の次世代リン酸鉄バッテリーを輸入し、テスト段階だという。古川さんはコンバートEVのメリットについてこう話す。

「50年前のヴィンテージカーに乗り続けるには、50年前の部品を調達してメンテナンスする必要があります。部品が手に入らなくなれば維持が困難になります。しかしEVなら、消耗品はバッテリーだけ。バッテリーの性能は日々向上していますから、定期的に交換すれば、アップデートした往年の名車に乗り続けることができます」

 コンバートという手法を選ぶことにより、長く乗りたい人にはお得で、環境への負荷も小さくなる、というわけだ。

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