北京五輪でフィギュアスケートの日本女子勢として12年ぶり4人目の表彰台に立った坂本花織。エネルギッシュなエピソードや、3月23日にフランスで開幕する世界選手権への意気込みを語った。AERA 2022年3月28日号の記事を紹介する。
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――つらい練習から逃げ出したことはないが、家からの「逃亡癖」はあると言って笑う。
坂本花織(以下、坂本):家出少女だったんです。嫌なことがあったら、すぐ家を出ていく。でも、暗くなったり、携帯電話の充電が減ったりすると帰ってくるってわかってるから、お母さんはひたすら電話をかけて充電をなくならせる方法をとるんです。自分はひたすら走って逃げ続ける。走って何になるん?って思うけど。一度、10キロくらい逃げました。神戸の御影のあたりにいて、そこから東のほうへずーっと走った。結局暗くなって、街灯も少ないから怖くなって電話しました。充電は5%しかなくて。ほんま、アホすぎ(笑)。
――エネルギッシュなエピソードは枚挙にいとまがない。
坂本:めっちゃしょうもないことなんですけど、バク転ができるようになりたいんです。アクロバットをやっている友だちから、腰が柔らかいとできるって言われて。女子ってレイバックっていう反るスピンをずっとやっているので、腰を痛めたりするんですけど、私は割と強いほうで。恐怖心さえなくなればいけるかなって。スケートに支障が出ないように、バク転に向けてもしっかりトレーニングします(笑)。
けがしたら危ないからとか、そういうのはめちゃくちゃあって。中3の運動会で騎馬戦にどうしても出たかったのに、お母さんからダメって言われて。もう一つの種目だった綱引きでも勝てるからそっちにしろって言われたけど、1人やったら勝たれへんし。結局、騎馬戦に出ちゃって上に乗りました。でも、やることに満足したから勝ったかどうかは忘れた。
――挑戦したいことを尋ねると、迷わず「4回転」の言葉が飛び出した。
坂本:やっぱり跳びたい。気分転換にもなるので、毎日数本はしてみようと思って練習しています。2年前にやっていたときより感覚はいいんです。でも、何が変わったかはわかんなくて。ジャンプのときは頭を使わないタイプで、「今の良かった」って言われたら、もう一度それやろうって。