導入2年目の大学入学共通テストは、どの科目も読解力重視だった。何となく選択肢を選んでしまい、実はよくわかっていない人が少なくない。本当の力をつけるための具体的な方法を受験指導の専門家に聞いた。AERA 2022年4月4日号は「読解力とデータサイエンス」特集。
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今号で「読解力を伸ばす」をテーマにした取材をするにあたって、記者は大学入学共通テストを自宅で解いてみた。
読解力といえば、国語だろう。記者として20年近く毎日のように原稿を書いてきた。間違えるわけにはいかない。だけどプリンターで出力した問題用紙は46枚もある。これを80分で解ききれるのかと不安がよぎる。
問題文と設問を何度も行き来しながら解答を選んだ。見直しているうちに別の選択肢も正しいように思えてしまう。なんとか「ひっかけ」をかわし、現代文は一問も落とさずにすんだ。
共通テストは導入2年目。今年も1月に実施され、約49万人が受験した。前身は大学入試センター試験だ。
■頭の中がカオスになる
国語の枠組みは、センター試験から大きく変わっていない。現代文が2問(評論文・小説文)と、古文、漢文が1問ずつの計4問。評論文では、第1問で「食べる」ことを考察する、視点の異なる二つの文章が問題文として出された。
小説文では、戦後の「内向の世代」を代表する作家、黒井千次の『庭の男』から出題された。主人公の心情を尋ねる従来型の設問のほか、この小説を読んだ生徒が国語辞典や歳時記で調べた言葉をもとに文章を解釈するという形式の出題もあった。
それまでのセンター試験は記憶力や知識量を問うものだった。共通テストは文部科学省が重視する「思考力・判断力・表現力」を測ることを目指していて、知識をどう活用するかに重点が置かれるようになった。
ただ、長年予備校で教え、「現代文のカリスマ」と称されてきた出口汪(ひろし)さん(66)は、国語の出題傾向について「センター試験時代と全く変化はない」と話す。共通テスト導入に向けた試行調査(プレテスト)では、駐車場の契約書や生徒会活動規約など実用的な文章が出され、受験生の中には必死に対策をした生徒もいた。だが、これまで2度の共通テストの国語では実用的な文章は出されていない。