NO MUSIC, NO LIFE. ──意訳すれば、「音楽のない人生なんて」。タワーレコードで1996年に生まれ、四半世紀を超えていまに受け継がれる鮮やかな黄色の地に赤い文字で書かれたこのキャッチコピーを知らぬ人は少ないだろう。その写真を当初から担当してきたのが、自身も音楽好きで知られる写真家・平間至だ。回顧展とも言える大型写真展「すべては、音楽のおかげ」では、「音楽家を撮った写真ではなく、写真自体が音楽になったような写真を感じてほしい」と語る平間の作品に、五感で触れてみたい。
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音楽を聴いているかのようだ。平間至が切るシャッターの音と、踏み鳴らす右足が、ビートを刻む。タワーレコードの「NO MUSIC, NO LIFE.」シリーズを25年以上手がける写真家の撮影スタイルには、誰もが瞠目するだろう。実際に曲をかけながら撮ることもあるが、そうでないときも、確かにそこに音楽がある。
「ROCKIN‘ON JAPAN」誌などでミュージシャンの撮影も手がけていた伊島薫に師事。“音楽好きのアシスタント”として編集部に覚えられ、仕事をまかせられるようになったのが1990年頃だという。世にセンセーションを巻き起こした写真集『MOTOR DRIVE』は95年刊だから、独立後早々に、現在の手法を確立していたことになる。
「止まってもらって撮ること自体にワクワクできなかった」のだと平間は言う。「お互いに動くことで、自分の想像を超えた写真が生まれるんじゃないかなと。視覚的に“この画(え)がいいから撮る”のではなく、カメラをパーカッションとしてとらえ、リズムやグルーヴを生み出して人を解放することによって、見たことのない表情やポーズを引き出す」
「僕にとってカメラは楽器」と語る写真家が撮るミュージシャンに「音楽のない人生なんて」を体感したい。
・山下達郎「NO MUSIC, NO LIFE.」(2011年7月-9月)
「いろいろな場面で撮らせていただいていましたが、実際にお会いすると、本当に音楽好きの少年、という感じがする方。それをどう写真で表現するかと考えたときに、少年って足が届かなくてぷらぷらさせるな、ああいう感じが撮りたいなと思って」。足が地面につかないようにアンプを高い位置に置き、その上に座ってもらった