堅あげポテト(写真はいずれも提供)
堅あげポテト(写真はいずれも提供)

 人気ポテトチップスを次々と開発した“神”と呼ばれる人がいる。カルビーの遠藤英三郎品質保証本部長だ。遠藤氏は、過去に「ピザポテト」や「堅あげポテト」、「ア・ラ・ポテト」など人気ポテトチップスを多数開発。SNSでは遠藤氏のことを「神」「創造神」などと称える声もある。ヒット商品はどのように開発されたのか、なぜ“ヒットメーカー”になれたのか、など本人に話を聞いた。

【写真】ポテトチップスの“神”の御姿

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――様々なヒット商品を出していますが、最も思い入れのある商品は何ですか? 

 『堅あげポテト』です。開発からブランドの確立まで一番時間がかかりました。開発を始めたのは、1992年で、それまでポテトチップスは中高生がメインターゲットだったんです。でも、日本の人口の動きを見ると、この層は少子化でどんどん減っていくことが十分に予想できる。それで大人向けのポテトチップスを作ろうと。そこで注目したのが堅あげのポテトチップスでした。

――「堅さ」に注目したのはどういうきっかけだったんでしょうか。遠藤さんの役割が大きかったのでしょうか。

 その辺りは、私の発想というよりは、マーケティングの成果だったと思います。海外の市場を見ていたときに、昔から「釜揚げ製法」でつくられる堅いポテトチップスがあったんです。だけど、大量生産もできない製法で、一定のニーズはあったんですけど、メジャーな商品にはなり切れていない感じでくすぶっていたんです。しかも、日本ではまだ商品化されていない。それに着目して、食べ応えがあって、一部の消費者にとっては酒のつまみにも適したものになるなと思いました。

――具体的に大変だったことは?

 堅あげポテトが大量生産できないのは、低温でゆっくり揚げるためです。大量生産しようとすると、どうしてもあのカリッとした食感が出ず、我々の要求する品質を満たすことがなかなかできなかった。原料の問題もありました。通常のポテトチップスでは、ジャガイモを切った後、水やお湯でゆがいて糖分を抜きます。これをしないと、ポテトチップスが焦げ過ぎてしまうんです。しかし、『堅あげポテト』の製法では水で洗ったりすると堅さが出てこないんです。その課題を解決するために、高品質のジャガイモが必要になりました。安定して一定の量を確保できる品種が出てくるまで時間がかかりましたね。だから、当初は期間限定や地域限定で発売していました。最初からすごく売れたわけじゃないんです。

えんどう・えいさぶろう/執行役員、品質保証本部本部長。1984年入社。4年間の工場勤務後、『ピザポテト』のほか『堅あげポテト』や『ア・ラ・ポテト』、『ポテトチップス 九州しょうゆ』など多くのロングセラー商品を開発した。2022年4月より現職。
えんどう・えいさぶろう/執行役員、品質保証本部本部長。1984年入社。4年間の工場勤務後、『ピザポテト』のほか『堅あげポテト』や『ア・ラ・ポテト』、『ポテトチップス 九州しょうゆ』など多くのロングセラー商品を開発した。2022年4月より現職。
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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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