とはいえ、制限がある中でこそのユニークな試みも。たとえば、2020年の5月、緊急事態宣言の発令中に配信されたリモート演劇「12人の優しい日本人を読む会」。相島さんが所属していた伝説の劇団「東京サンシャインボーイズ」の代表作を、リモート会議システムを使って画面上で再現した。秋には、黒柳徹子さんが主演する「ハロルドとモード」で、“朗読劇”というスタイルながら、相島さんが、荻野清子さんのピアノ演奏に合わせてブルースハープを披露する場面もあった。
「『ハロルド~』は、今までの朗読劇とちょっと違って、より演劇に近い部分を攻めることができた気がして、すごく楽しかった。その前には、PARCO劇場で『大地』という舞台に出演したんですが、昨年お亡くなりになった辻萬長さんと、セリフで殴り合うことができた気がしていて……。当時、辻さんは76歳、黒柳さんは80歳を過ぎていらっしゃいましたが、お二人ともとてもアグレッシブに舞台に向き合っていて、60を目前にした僕にとっては、これからの生き方を示してもらった気持ちになりました」
そう明るく言ってから、「でも、じゃあ今僕が何をやっているかというと、結局、いろんなことをお休みしちゃっているんですけどね」とバツが悪そうにつぶやく。
「去年の3月にホームページを立ち上げまして、YouTubeとか、SNSを使っていろんなことをやる予定だったのが、コロナのこともあって、進んでいなくて……(苦笑)。去年還暦を迎えたから、僕なんかもう年寄りだけど、若い人たちに新しいことを教えてもらいながら、まだまだ面白いことをやっていきたいんですよね」
(菊地陽子 構成/長沢明)
※週刊朝日 2022年5月27日号より抜粋