金の需要は世界的に高まっている。タイの首都バンコクにある「金行」には指輪やネックレスが並び、多くの客が訪れていた/3月30日
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 デフレ時代は預貯金一辺倒でもよかったが、インフレが進むとまったく反対の対応が必要になる。物価上昇とともにキャッシュの実質価値が目減りしてしまうため、預貯金に偏重せず資産を守る投資先を見つけておきたい。AERA 2022年5月23日号から。

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 身近な存在である国内不動産はどうか。不動産コンサルタントで『バブル再び:日経平均株価が4万円を超える日』が話題の長嶋修さんが言う。

「不動産はインフレに強いというのは、あくまで一般論にすぎません。日本の場合、全国的にその傾向が見られたのは戦後の高度成長期に限られた話です。インフレに勝てるのは、今後も数十年にわたって高いニーズ(需要)を見込めるエリアの物件に限られてくるでしょう。不動産は一にも二にも立地。また、最近は省エネ性能の高さ(ランニングコスト)も重要な評価ポイントとなっています」

 日本全体で見ると、昨年の時点で土地の資産総額は90年のバブル期から半減しているという。2050年には1億人を割り込むまで人口減少が続く日本では「全体の70%程度の不動産価格がこれまでの30年間と同様に、だらだらと下がり続けるはず」と長嶋さんは予測する。

AERA 2022年5月23日号より

 今年4月以降、建設に必要な原材料価格は10~20%の上昇を遂げているという。では、こうしたコストの増加が価格に転嫁されて不動産価格も上昇するのかと問えば、「必ずしもそのような状況にはならない」と長嶋さん。なぜなら、日本人の所得が増えておらず、下手に値上げに踏み切ると、なかなか買い手が見つからないからだ。

 末永く高いニーズが見込まれる優良物件を見極めることは、当然ながら素人には酷だ。実物の不動産よりも小口から購入でき、複数の物件に分散投資を行っているのでリスクも抑えられるという点では国内のリート(Jリート)が無難な選択肢かと思われる。ただ、初めて登場したのが01年で、インフレを経験していないのも確かだ。

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