旭物産の小美玉工場で栽培されるモヤシ(撮影:國府田英之)
旭物産の小美玉工場で栽培されるモヤシ(撮影:國府田英之)

 さらに原油高が追い打ちをかける。一日40トン、約20万袋を生産する旭物産の小美玉工場(茨城)では、モヤシを育てるための水をボイラーで温める必要があるが、その燃料は重油。21年10月~22年3月の燃料代は前年同期比の5割増となった。この他、包装資材や輸送費も上がっている。

 林社長はこう訴える。

「これまで、がまんしてがまんして薄利でやってきましたが、もう限界です。今後、緑豆や燃料費のさらなる高騰が予想され、赤字に転落する日が近づいています。納入価格をせめて2円でも、できることなら4~5円上げていただきたい」

 協会は業界全体の窮状を訴え、生産者はスーパーなどに対し納入価格の引き上げを求め続けてきた。世情を鑑みて応じてくれた小売業者も一部あるが、全体的にガードは固いという。

 あるモヤシ生産業者は、

「大手スーパーに納入価格を上げてほしいとお願いしたところ、『うちで扱っている別の業者からは値上げの話は来てないよ』と返されました。それなら取引をやめるよ、という言葉にも聞こえました。スーパーの姿勢にも問題は感じますが、『モヤシは安いのが当たり前』との消費者意識が強すぎて、それが価格を上げられない原因になっているようです。スーパーも過当競争で、客離れが怖いですからね」と実情を話す。

 1995年に550あったモヤシ生産者は、今は110にまで減少した。今年もすでに数件の廃業が確認されているという。

 安値販売が常態化し、生産コストが上昇する一方で納入価格をあげてもらえないため、生産者はギリギリの経営を余儀なくされる。結果、生産効率化や人手不足を補うための設備投資をするお金がない。後継者も育たず廃業を選ぶしかないという悪循環に陥っている。

 食べる側も、モヤシを軽く扱ってはいないか。

 モヤシが大半の「野菜トッピング」を、頼めば丼からこぼれ落ちそうなほど山盛りにしてくれるラーメン店や、モヤシは食べ放題のジンギスカン店など「タダ」でサービスしてくれる飲食店がある。

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写真だけ撮ってラーメンのモヤシを残す客たち