しかし、となると米国が中国に対して軍事的関与をした場合、日本はどうすべきなのか。公になってはいないが、当然ながらバイデン氏はそのことを岸田氏に確かめたはずである。それに対して、岸田氏があいまいな対応をできるはずがない。
岸田氏は日米同盟のさらなる強化が不可欠で、日本の防衛力を抜本的に強化し、その裏付けとなる防衛費の相当な増額を確保する決意を表明したようだ。
ところで、ウクライナ戦争以後、世界中で有事にどう対応するかが大問題となっているが、そもそも米国やNATOの国々にプーチン大統領のウクライナ侵攻を阻止することはできなかったのか。
1990年に東西ドイツが統一されるとき、米独は“これをソ連が是認するなら、1インチもNATOを拡大しない”と約束している。だが、その後、NATOは何度も東方拡大を繰り返している。米国やNATO諸国の対ロシア戦略があまりにもずさんだったということなのだろう。
重要なのは有事にどう対応するかではなく、有事をどう生じさせないか、ということだ。
田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数
※週刊朝日 2022年6月10日号