ミッツ・マングローブ
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 ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、「坂口杏里さん」について。

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 6月は「プライド月間」だそうです。近年よく目にする「LGBTQ+」「ジェンダー」「多様性」といったワードがありますが、「プライド月間」とは、世界的にLGBTを中心にそれらの意識を高めましょうという、いわゆる「キャンペーン強化月間」。

 実は私、「プライド月間」なる言葉の存在は認識していましたが、それが6月だということは今まで知りませんでした。無論、私はこの件に関してはガッツリ当事者側の人間です。故に、賛否を含めてその辺の意識は一般世間よりも常に強いわけで、今さら「6月だから」と意気込んだりすることもなく日々生きているからなのかもしれません。ところが先日、テレビ番組のスタッフに「今月はプライド月間ですね!」と微笑まれ、「あ、そうなんですか?」と返したところ、たいそう驚かれました。このような社会的ムーブメントの熱量は、時に当事者の意識すらも追い越す場合があるとは言え、もう少し私も世間の流れに敏感になっていなければと思った次第です。

 一方で「強化月間」や「〇〇デー」の類には、長らくいかんともしがたい矛盾があるのも事実。「プライド月間」にしろ「世界エイズデー」にしろ「春の交通安全運動」にしろ、そんなものを風物詩にしてしまうこと自体が、本来の目指すべきところからは逆行してしまっている状態でもあるわけです。関連イベントでも、特にコロナ禍を経た最近では、「今年は無事開催できて嬉しく思います」なんて台詞や文言をあちこちで見かけることも少なくありません。いずれも長期的に対峙していくべき問題なのは理解していますが、やっぱりちょっとモヤモヤします。

 なんて揚げ足取りはともかく、それよりも「プライド月間」に絶好のタイミングでおめでたいニュースが飛び込んできました。坂口杏里さんが、FTM(女性から男性に性別を適合させた人)の男性と結婚されたとか。中でも仰天したのは、坂口さんご本人による「彼は一般人の、おなべです!」という発信です。

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