村上春樹さん(左)と山下洋輔さん(右)
村上春樹さん(左)と山下洋輔さん(右)

延江:春樹さんは早稲田で田原さんの後輩ですけど、「最近の早稲田はとてもきれいになっちゃった」と苦笑されています。

田原:僕も学生たちと会う機会があるけど、早稲田の学生も今はみんないい子で真面目で、「壊す」とかそういう空気感はないね。

延江:それは世の中全体がそうで、本当は雑然とした中にこそ真理があるのに、今はすべてきれいに整理されてしまう。それに春樹さんがおっしゃるには、あの時代は世の中が騒然としていたけど、「やればなんとかなる」「明日は希望がある」という空気があったと。だから今もう一度あの時代をやりたい、と春樹さんはなったんじゃないか。あのときの田原さんの心持ちに似て、突破力が閉塞(へいそく)状況を打ち破るきっかけになる気がしたのかもしれません。

田原:学生運動が始まったきっかけは60年の日米安保反対です。今、日本の安全保障は、米国が世界の警察をやめたことで岐路に立たされている。当時と似た空気があるのかもしれない。

延江:一方で春樹さんに「60年代は楽しかったですか」と聞いたら、「楽しいというよりワクワクした」と。ローリング・ストーンズやビートルズが次々にアルバムを出して、って。音楽が持つ力ですね。当時山下さんは20代で、今は80代。どんなライブを見せてくれるのか、楽しみで仕方ないですね。

「再乱入」を果たした、左から山下洋輔、中村誠一、森山威男の面々(TOKYO
「再乱入」を果たした、左から山下洋輔、中村誠一、森山威男の面々(TOKYO FM/早稲田大学国際文学館 共催「村上春樹presents 山下洋輔トリオ 再乱入ライブ」)より
「再乱入ライブ」で演奏する山下洋輔さん(TOKYO
「再乱入ライブ」で演奏する山下洋輔さん(TOKYO FM/早稲田大学国際文学館 共催「村上春樹presents 山下洋輔トリオ 再乱入ライブ」)より
当日の模様は、オンラインで生配信された(TOKYO
当日の模様は、オンラインで生配信された(TOKYO FM/早稲田大学国際文学館 共催「村上春樹presents 山下洋輔トリオ 再乱入ライブ」)より

(構成/本誌・秦正理、佐藤秀男)

週刊朝日  2022年7月22日号より抜粋

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