延江:春樹さんは早稲田で田原さんの後輩ですけど、「最近の早稲田はとてもきれいになっちゃった」と苦笑されています。
田原:僕も学生たちと会う機会があるけど、早稲田の学生も今はみんないい子で真面目で、「壊す」とかそういう空気感はないね。
延江:それは世の中全体がそうで、本当は雑然とした中にこそ真理があるのに、今はすべてきれいに整理されてしまう。それに春樹さんがおっしゃるには、あの時代は世の中が騒然としていたけど、「やればなんとかなる」「明日は希望がある」という空気があったと。だから今もう一度あの時代をやりたい、と春樹さんはなったんじゃないか。あのときの田原さんの心持ちに似て、突破力が閉塞(へいそく)状況を打ち破るきっかけになる気がしたのかもしれません。
田原:学生運動が始まったきっかけは60年の日米安保反対です。今、日本の安全保障は、米国が世界の警察をやめたことで岐路に立たされている。当時と似た空気があるのかもしれない。
延江:一方で春樹さんに「60年代は楽しかったですか」と聞いたら、「楽しいというよりワクワクした」と。ローリング・ストーンズやビートルズが次々にアルバムを出して、って。音楽が持つ力ですね。当時山下さんは20代で、今は80代。どんなライブを見せてくれるのか、楽しみで仕方ないですね。
(構成/本誌・秦正理、佐藤秀男)
※週刊朝日 2022年7月22日号より抜粋