1945年8月15日、玉音放送をラジオで聴き、涙を流す日本軍の捕虜。グアムの収容所で撮影された写真=渡邉英徳さん提供
1945年8月15日、玉音放送をラジオで聴き、涙を流す日本軍の捕虜。グアムの収容所で撮影された写真=渡邉英徳さん提供
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 76年前のきょう、8月15日。玉音放送をラジオで聴いた日本軍の捕虜は、肩をはったまま、涙をぬぐうようにして白い布を目元に押しあて、額に汗をにじませていた――。

【原爆投下直後や当時の子どもたちのカラー化など、写真の続きはこちら(計16枚)】

 冒頭の写真はグアムの収容所で撮影され、ワシントンのアメリカ海軍国立博物館に貯蔵されていた。もとはモノクロだった。色付けされたことで、南国の抜けるような青空が目に留まるように鮮やかになった。よく見ると、写真右側にある木の奥に鉄条網のような網があり、そこが収容所であることを改めて物語っていた。

National Museum of the United States Navy
National Museum of the United States Navy

 モノクロ写真をAI(人工知能)と人のコラボレーションによってカラー化することで、凍てついた記憶を解凍し、戦争体験者の「想い・記憶」を未来に継承することを試みる「記憶の解凍」という活動がある。広島市出身で東京大学2年生の庭田杏珠さんと、東京大大学院情報学環教授の渡邉英徳さんによる活動で、戦前から戦後のモノクロ写真を、AI技術で自動色付けしたのち、資料・当事者との対話・SNSで寄せられたコメントなどを活かしながら、人の手で色補正を繰り返し、カラー化写真を完成に近づけていく。

 モノクロ写真355枚をカラー化して収録した写真集『AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争』(光文社新書)は、8月10日に広島県の書店員が選んだ書籍に送られる「第11回 広島本大賞」に選ばれた。

 写真は、ツイッターなどのSNSでも広く拡散されてきた。その一部を、渡邉さんに提供していただいた。

 渡邉さんは、カラー化することで、モノクロの世界で「凍てついて」いた過去の時が「流れ」はじめると話す。

「色が付くだけで、遠いむかしの戦争が、いまの日常と地続きになっていることに気付かされます。たとえば、当時の世相・文化・生活のようすなど、写し込まれたできごとにまつわる、豊かな対話が生みだされます」

 AIは、人肌や空、海、山などの自然を自動的に色付けするのが得意な一方、衣服や乗り物などの人工物に対しては不自然さが残ってしまうようだ。

「AIが判断できない人工物の色は、当時のようすを示す情報や人の証言などをもとに修正します。SNSで寄せられた情報をもとに、色補正することもあります。たとえば、映画『この世界の片隅に』の片渕須直監督からは広島原爆の『きのこ雲』の色合いなど、さまざまなご指摘をツイッターでいただき、大いに参考になりました。今年は長崎原爆の『きのこ雲』の色合いについて、大矢正人氏(長崎総合科学大学)の指摘をもとに、さらに色補正を加えました」

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カラー化された原爆投下の直後…