2018年に出版されて話題となった『わたしを空腹にしないほうがいい』に続く2冊目のエッセー集。歌人、俳人など様々な顔をもつ1994年生まれの著者が、高校から大学、そして会社員生活までを勢いよく綴る。

 著者は岩手県盛岡市出身。大学入学とともに仙台市に出た後、再び盛岡に戻った。そのため、エッセーにも東北の風土がそこかしこに表れている。たとえば「もっつもっつ」と降る雪、夏野菜でつくる「だし」、三陸で朝採れた殻つきの生うに。それらは彼女の語る等身大の日常に、静かな彩りをもたらしている。

 個性豊かな「ともだち」との交流も魅力的だ。彼ら彼女らとの忘れられない、忘れたくない数々のシーンが、確かな筆力で書きとめられている。章の表題にもある「エリマキトカゲ」のように、勇ましく駆け抜けていく筆致を楽しみながら読みたい。(後藤明日香)

週刊朝日  2020年9月18日号