「モノクロの地獄から解放された」ほぼ初のカラー写真展
「今回、カラーの写真展はほぼ初なんです。それもうれしい。なんか、モノクロの地獄から解放された、みたいな。モノクロのはけっこう考えて撮っているんです。でも、これは何も考えていない。面白いですね。まあ、素直ってことですね」
写真展の予定が決まると、東京・目黒にあるふげん社を訪れ、関根社長と話す機会が増えた。
「会うといつも写真の話をするんですけど、写真家だって人間なんだから、みたいな話も多いんですよ。家族のこと、年齢のこととか。やっぱり生き方よね、みたいな」
今回、撮りためた400、500枚の写真から展示用に100枚をセレクトした。どんな基準で作品を選んだのか、たずねると、「何なんですかね?」と、考え込む。
「『絵柄がきれい』とかの理由ではほとんど選んでいないです。やっぱり、撮ったときに心が動いた、感じのよいやつかな。『これ、思い出があるなあ』とか、『撮るとき、こうやったなあ』とか、いろいろ思い出して」
写真のセレクト作業をしていたころ、新型コロナの影響で街から人影がめっきり薄くなった。
「仕事がぜんぜんなくなって。でも、いままで撮った写真を見返すいい機会かなとも思った。そういうタイミングだったのかもしれない。そういう意味では関根社長はよく見つけてくれましたね。ぼくの、こんな、こそこそ撮っていたやつを」(笑)
写真展のことは毎日考えている。会期中も新しい作品を追加するかもしれないと言う。開催までもうすぐだが、ぎりぎりまで細部は決まらないし、その後も変化し続けるのだろう。日々変わる「写真日記」なのだから。
(文・アサヒカメラ 米倉昭仁)
【MEMO】元田敬三写真展「渚橋からグッドモーニング」
コミュニケーションギャラリー ふげん社(東京都目黒区下目黒5-3-12、電話03-6264-3665 https://fugensha.jp)で9月10日~10月4日に開催。