現在の欧米では、旧来の粗野な「白人至上主義者」のイメージとはだいぶ様相を異にする、知的武装を施した人々が手を携え、「白人の権利」を声高に訴えはじめている。特にアメリカに焦点を当て、オルトライト周辺の何人かのキーパーソンとの対話を糸口に、「白人ナショナリズム」の実相に迫っているのが本書だ。

 移民が侵略してきて白人の国が「乗っ取られる」と主張する彼らは、グローバル化にもNOを突きつけ、文化的同一性の高い日本への憧れを口にする。白人が多数派としての地位を失う途上にあるこの国では、その「被害者」意識にも一定のリアリティーがある。

 警官による黒人の不当な拘束をきっかけにBLMの合唱が起きる中、この国のもうひとつの顔に目を向けることは、民主主義の未来を考える上でも有益だ。(平山瑞穂)

週刊朝日  2020年8月7日号