米国メリアム・ウェブスター社で約20年にわたり辞書編纂に従事した女性が、辞書をめぐる秘話や苦労話を綴った。
But、Take、Bitch、Nudeなど14の言葉を見出しにとり、それぞれの言葉にまつわるエピソードをもとに辞書編纂の世界を垣間見せる。ある言葉がその言語に定着したかどうかを判断するための指標も紹介。語釈や用例などはできるだけ中立的でないと抗議が殺到するという。Marriageの項では、同性婚にふれた語義を加えたときに大きな反発にあい、心身ともにすり減らしたと明かす。
「辞書編纂者はその生涯を、だれにもまねできないやり方で、英語という言葉の海を泳ぎまわることに費やす」と著者。AIが発達しても、すぐれた辞書編纂はコツコツと積み上げた仕事にかかっていることがわかる。(大野和基)
※週刊朝日 2020年7月31日号