ロマンティック・コメディの魅力を数々の作品を通じて紹介。ドイツ文学者で映画批評家でもある著者は「軽視されがちだが、高く評価されるべきだ」として、恋愛喜劇が時代とともにいかに変化してきたかを確認し、名作に共通する物語の構造を解き明かす。

 恋愛喜劇は1910年代の無声映画の時代から作られ、30年代には主人公が突飛な行動をとる作品が人気を博した。50年代以降は性の解放やHIVの感染拡大などに伴うセックス観の変遷に影響を受けた。90年代以降はLGBTや高齢者を主人公とする作品が増えたという。また「ローマの休日」や「プリティ・ウーマン」などを例に、物語の構成も時代とともに変わったと説く。

 過去を振り返る手段としてもロマンティック・コメディは最適。外出自粛の夜も映画を見て幸せに。(金田千里)

週刊朝日  2020年7月24日号