タイトルと表紙から、侮ってはいけない。文豪の著作から、今日からでも使え、思わずうなってしまう言葉を抽出し、解説した一冊。

「畏怖」「厚誼」「何卒」「哀願」「難儀」「恐縮」など我々が日頃から目にする言葉から、「豚児」「艱難」「生中」「的?」「小絶える」など令和の時代の生活ではなかなか耳にしないものまで。日常で使ったら、「おまえは、文豪かよ」と指摘されそうな文言も少なくないが、読みながら、笑え、知識も得られる。

「季節のあいさつ」「無沙汰後のあいさつ」「文豪ならではの『お元気ですか』」「おいしさ、味を表現する言葉」など状況に応じた言い回しもまとまっている。

 コロナ禍で外出自粛が続いただけに、今夏は、夏目漱石や芥川龍之介の言葉遣いを参考に暑中見舞いを送るのも楽しいかも。(栗下直也)

週刊朝日  2020年7月3日号