ブライアンは最近のインタビューで、深刻化する環境問題や英国のEU離脱が社会に分断と混乱をもたらすとして、警告をたびたび口にしている。クイーンの音楽に通底しているのは、国や年齢、性別、価値観の違いを超えて人々が手を結び、尊重しあうことの大切さだ。そのメッセージがアダムという世代の違うシンガーを得て、鮮明にステージで表現されるようになったということなのだろう。
と、アエラ的にはそんな分析をしてしまうのだが、ステージを見ている間は小難しいことは考えず、導かれるまま歌い、踊り、楽しむだけだった。そして、自分と同じように歌う周囲の声を聞きながら、ブライアンたちを含め、人生を生き抜く全員が同じ時間を過ごす奇跡を感じ、涙することもあった。あの会場を温かく包んでいた、不思議な幸福感はなんだったのだろう。
アリーナ席で見た東京都在住の会社員女性(43)は、映画を機にクイーンにはまった一人だ。
「臨場感がすごくて、舞台や映像も凝っていて華やか。8割は知った曲でした。一緒に歌ったり、スマホで写真や動画を撮ったり、とにかく楽しかったです」
また、長時間、演奏できるブライアンとロジャーの体力にも驚いたそうだ。
「70歳を過ぎたおじいちゃんたちを格好いいと思う自分にもびっくりです」
撮影OKの海外アーティストは増えているが、クイーンのように長時間の動画撮影も許すのは珍しい。スマホ撮影は周囲と共存すればいいのだが、鑑賞マナーの問題からトラブルになることもある。筆者が見た日で面白かったのは、撮影を楽しむ人がいる一方で、撮影はせずに、自分の目と耳でブライアンたちとの時間と空間の共有を重視する人も目立ったことだ。
フレディがいない今、クイーンのフロントマンはブライアンだ。時折、日本語を交えて観客に話しかける姿からは、日本とのつながりを大切に思う気持ちがしみじみと伝わってくる。
コンサートだけでなく、居酒屋での食事や、開催中の「クイーン展ジャパン」の見学など、彼らは日本を満喫する様子をインスタグラムに上げていた。