4年ぶりの来日公演になった「クイーン+アダム・ランバート」。3都市4公演で最多の13万7千人を動員。1月25、26日開催の東京公演でも、極上のクイーンワールドで観客を夢見心地にした。AERA2020年2月10日号ではクイーンの来日公演や開催中の「クイーン展ジャパン」を特集。ここでは、ライブの「興奮」と「熱」をそのままお伝えする。
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さいたまスーパーアリーナの照明が落ち、オーケストラのチューニング音からドラマチックな曲調の「イニュエンドウ」に変わった。ステージ上の煌めく王冠風オブジェがゆっくりとせり上がる。背後から登場したのは、オペラハウスのような深紅の豪華な舞台だ。
一音でブライアン・メイのレッド・スペシャルと分かるギターが「ナウ・アイム・ヒア」のイントロをかき鳴らす。スタンド席の一番上までぎっしりと埋め尽くした3万人の観客は、ここから一瞬もステージから目を離せない怒濤の「クイーン+アダム・ランバート」の世界に叩き込まれていった。
演奏されたのは29曲。オールドファンが泣いて喜ぶ「輝ける7つの海」や「炎のロックン・ロール」から、映画を機にクイーンを知った新しいファンにも親しまれている「RADIO GA GA」「ウィ・ウィル・ロック・ユー」など、数々の名曲が響き渡る。ステージと観客が一つに溶け合い、2時間10分強は夢のように過ぎていった。
クイーンのボーカリストには、1991年に亡くなったフレディ・マーキュリーの影とどう折り合いをつけるかの難題が突きつけられる。ソロ活動と並行し、ブライアン、ドラムのロジャー・テイラーと「クイーン+」として活動しているアダムもつねにフレディと比較されてきた。
今回はどうだったのか。音楽評論家・東郷かおる子さんに聞いてみた。
「もともとうまかったけれど、さらに歌唱力が上がり、存在感も素晴らしかった」
と手放しで褒める。しかも、これまでは彼の歌からフレディの幻影が消えることがなかったが、今回はリスペクトを感じさせながら、一人のシンガーとしての個性も十分に発揮されていたという。
じつは筆者も一番、感動したのが、このクイーンとアダムの関係性だった。表舞台に登場するのがブライアンとロジャーのみにはなったが、フレディと、引退したベースのジョン・ディーコンもメンバーであることは永遠に変わらない。そこに、存在感を増す38歳のアダムが加わることで、クイーンが作り出す世界の層が厚くなり、未来に続く道が広がったと感じたのだ。
東郷さんはこの変化を昨年、ブライアンに電話取材したときのコメントにヒントがあると教えてくれた。
「クイーンの音楽を若い人にも伝え続ける大切さ、価値について語っていました。ステージを見て、その責任感と覚悟がすごく伝わってきましたね」