その人の人生のほんの一部ですけれど、触れる感覚があって。それで撮らせてもらうからリアルで、でも単に写真を撮っただけでなく一瞬でも人生を一緒に過ごした感じがある。何年も前に撮らせてもらった人から連絡が来て、すごい身内の結婚式に呼ばれたことがありました。また一度だけ会った方が亡くなって、形見をいただいたことがあります。
カメラがあるからさまざまな人と出会い、同調できた。本当に写真に感謝しています。僕は写真を100%信用しています。宿命ですね。写真の神様が声を掛けろ、撮れと言っているんですよ。
■本当に撮りたいのか?自分に嘘をつかない
誰かの写真を見て同じように撮りたいと思うきっかけは大事。でもそこにこだわる必要はないと思います。撮りたいもの、やりたいことをやれてないから「撮れない」という言葉がでてくる。無理して違うことをしようとしてないで、やりたいようにやること。1年なのか10年なのかわからないけど続けることです。好きなものをずっと撮っていたら何か見えてくると思います。
【元田敬三さんへの8つの質問】
Q1:カメラは何を使っていますか? その理由は?(もし変遷があればそれも)
元田:3年ほど前からライカR8。TTLオートで日中シンクロしやすい。以前はライカM6と35ミリ、プラウベルマキナ67W、ペンタックス67とさかのぼる。一眼とレンジファインダーの差は気になりません。カメラは大きいほうがいいですね。シャッター音も大きいほうが人をしっかり撮っている感じで。
Q2:レンズは何を使っていますか? その理由は?(もし変遷があればそれも)
元田:21ミリのスーパーアンギュロン。超広角だけど真っすぐ平行に撮るとぜんぜん歪曲しない。縦位置だと上下に大きく引き伸ばされて好み。一般的な16ミリ、ズームの21ミリだとレンズの面白さばかりが強くなりますね。以前は35ミリF2のズミクロン。自分にとっては望遠に近い(笑)。人にカメラを向けてから一歩下がる感覚、そのなかに背景を凝縮するのがストイックで面白かったですね。