ジャーナリストの田原総一朗さんが、デモの続く中国について語る。
* * *
異例の「3期目入り」を果たし、盤石と見られていた習近平体制だが、早くも足元が揺らぐ事態に見舞われている。
「ゼロコロナ政策」への不満を爆発させた市民が、各地で大規模な抗議デモを繰り広げたのだ。
デモの発端となったのは、11月24日に新疆ウイグル自治区ウルムチ市で起きたマンション火災であった。
現場や周辺はゼロコロナ政策により封鎖状態となっており、そのために救助や消火活動が遅れたと指摘されている。この火災で10人の死者が出たことが、市民の怒りに火をつけたわけだ。
こうした状況がインターネットやSNSで拡散され、各地に怒りが飛び火した。中国の10都市あまりで大規模な抗議デモが起こったほか、国内の50を超える大学でも抗議活動が相次いだ、と香港メディアは報じている。
各地のデモではゼロコロナ政策への不満のほか、「言論の自由」や「民主主義」を求める声が上がっている。特に上海では、「共産党退陣せよ」「習近平辞めろ!」と体制を直接非難する、極めて異例の事態となった。
英フィナンシャル・タイムズは、「1989年の天安門事件以来で前代未聞」と指摘し、米ニューヨーク・タイムズは「デモ参加者が協力すれば、共産党が最も恐れていたことが現実となるだろう」と報じた。
12月に入って、北京や広州などで封鎖措置などの規制を大幅に緩和する動きが出てきた。
事実上、ゼロコロナ政策の修正ともいえる状況である。
習近平国家主席は10月の共産党大会で、肝いりのゼロコロナ政策の成果を強調し、「堅持していく」と明言していたのだが、自らの発言を撤回し、政策の誤りを認めるということなのか。
なお、共産党大会で習氏は、台湾統一に意欲を示し、「決して武力行使の放棄を約束しない」と言った。こんなことを習氏が発言したのは初めてである。