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──二人のゲイ男性の恋愛を繊細かつ現実的に描くあたりなど、実話かのように感じさせますが、驚くことに原作は女性が執筆した小説なんですね。
「その重要性が軽視されがちなんだ。つまり、この物語は男女の愛、同性同士の愛などの枠組みを超えて、人間としての感情や心理という大きな題材を扱っている。とても大きなテーマに行き着いてゆくんだ。3人の恋愛であり、2カップルの二つの恋愛についてであり。愛の描き方でいえば、世界中の人々が共感できるものだ。原作者のベサンはこの壮大なテーマを見事に、美しく描いてくれたと思う」
──本作は舞台監督出身のあなたにとって長編映画2作目ですね。長編映画に取り組むことの魅力とは?
「自分が居心地の良いと感じる領域を出て、新しいことに挑戦するのは大切なことだ。舞台に携わって約30年、長編映画を手掛けるようになってからは10年ほどになるが、満足度が高い。舞台では不可能だが映画ならできることは少なくない。映画と舞台は非常に異なる媒体だと思う。だが、二つに共通点があるとしたら、俳優と監督の関係だ。俳優と話し合いをしながら、キャラクターを作り上げていく点だ。舞台も映画も両方好きだし、やりがいがあるんだ」
(高野裕子=在ロンドン)
※週刊朝日 2022年12月23日号
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