『下流社会』の著者が放つ最新の社会時評。パルコが発刊していた伝説のマーケティング雑誌「アクロス」で編集長まで務めた経歴を持つ著者が、1980年代当時、時代の最先端の動向を鋭く切り取っていた「アクロス」の記事を取り上げながら現在の状況を概観し、さらにこれからの日本が向かっていく先を予見している。

 現在のユニクロやニトリの隆盛に代表される安さと機能性重視の風潮や、ものを持つことに価値を見いださないシェアリングエコノミーの萌芽に、バブル期以前から注目していた点は、卓見としか言いようがない。

「ファスト風土化」(著者の造語)を始めとする生活空間の「均質化」を極めた先に見えてくる、伝統や自然への回帰傾向。著者はそこに、「近代」がもはや「懐かしい」風景になってしまった時代の逆説を見る。(平山瑞穂)

週刊朝日  2019年5月3日‐10日合併号