2021年にテレビ番組で「アスペルガー症候群だ」と明かしたイーロン・マスク氏(撮影/写真映像部・松永卓也)
2021年にテレビ番組で「アスペルガー症候群だ」と明かしたイーロン・マスク氏(撮影/写真映像部・松永卓也)
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 発達障害を公表しているイーロン・マスクをはじめ、特性を生かし、世界的に活躍する人もいる。どんな特性がビジネスで生きるのか。2022年12月19日号の記事を紹介する。

【ビジネスで生きる主な特性はこちら】

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 イーロン・マスクやオードリー・タン、スティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツ──。世界を動かすその才能の源はどこにあるのか。『発達障害という才能』の著者で、大人の発達障害を世に知らしめた昭和大学附属烏山病院長の岩波明氏に話を聞いた。

──発達障害のどのような特性が、今ビジネスの現場で必要とされているのでしょうか。

 新規ビジネスを生み出すためには新たな視点と相当の突破力、そして人を巻き込む力が必要ですが、発達障害、特にADHD(注意欠如・多動性障害)の方が持つ特性とかなり一致しています。起業する人の中にADHDの人が多いのはそのためです。

 ADHDは病名にある通り、「集中しにくい」という注意力の障害があるのですが、逆に特定の事柄に対しては集中しすぎてしまう「過剰集中」の面も持ち合わせています。関心がある事柄については、とことん突き詰め集中するのです。もちろんそこにはかなりの努力が必要なのですが、想定外で常識的でない事柄に熱中し、高い集中力を持ち続けることが可能なADHDの人は、物事の立ち上げに向いているといえます。

■仕事に没頭し続ける

 現在進行形で世間を騒がせている、イーロン・マスク氏もその一人でしょう。電気自動車のテスラ社と衛星通信システム「スターリンク」を運用するスペースX社のCEOで、今年の10月にツイッター社を買収したことは記憶に新しいと思います。自身は「アスペルガー症候群(※)」であると公言していますが、行動パターンはADHDの典型です。思ったことをそのまま言い、つい悪ふざけをする。エープリルフールに「テスラ社が破綻した」とツイートし、自社の株価を8%近く下落させたこともありました。

 ただし彼は相当なハードワーカーです。ADHDで成功している人は仕事に没頭し続ける傾向があります。才能も発想の豊かさも必要ですが、それにプラスして努力が伴わなければ成功には至りません。日本では、ニトリ会長の似鳥昭雄さんがご自身で公表していますし、楽天グループ代表取締役会長兼社長の三木谷浩史さんは著書の中で、「ADHDの傾向があるかもしれない」と自己診断しています。

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