敵の情報を得るといったミッションのために極秘に活動する「スパイ」。『ミッション・インポッシブル』や『007』シリーズなどの映画を観ていると、派手なアクションやガジェット的な小道具がまず思い浮かびますが、実はスパイの装備で最も重要なものは「スパイ本人の頭脳」なのだとか。 
 中でも記憶力はスパイの任務に欠かせないもので、膨大な情報を完全に記憶して正確に再現できなくてはならないといいます。
 その能力、スパイじゃない私たちにも少しでいいから分けてほしい......! ということで、記憶力を鍛え、思考を研ぎ澄ます方法をさまざまな演習をとおして学べる一冊がカミール・グーリーイェヴ デニス・ブーキン著『KGBスパイ式記憶術』。本国ロシアのみならず、アメリカ、中国、ヨーロッパなど世界13か国で刊行されたベストセラーが、ついに日本にも上陸したというわけです。
 本書がユニークなのは、スパイ小説さながらのスリリングなストーリーが用意されている点。
 1954年、モスクワ大学で心理学を研究するA・N・シモノフは、プーチンも在籍した東西冷戦時代最強の情報機関KGB(ソ連国家保安委員会)にスカウトされ防諜活動に従事することに。果たしてシモノフはスパイとして成長し、ミッションを遂行できるのか......!?
 純粋にストーリーの続きが気になって、結末を知りたくて仕方がなくなる人もいるに違いありません。
 そしてその途中にはさまれているのが「記憶力テスト」や「脳のトレーニング」といった演習問題。たとえば、「演習11」では「結び付けてみる」という問題が出されます。「スイカ/バット ヘリコプター/ドレス 木/電話」といったペアになっている10の単語を60秒間で覚え、時間が来たらそれぞれの単語とペアの単語を声に出して言ってみるというもの。
 これはまず、ペアになっている単語を互いに関連付け、それを視覚的にイメージし、どのように関連付けたかを記憶するとよいそう。すばやく連想する能力、さまざまな物事を互いに関連付ける能力は、どの記憶術でもきわめて重要だといいます。たしかにこうしたさまざまな訓練を地道に積んでいけば、個人の記憶力を最大限に高められるかもしれません。
 記憶力は勉強だけに限らず、ふだんの生活やビジネスにおいても必要なもの。また、本書で訓練を重ねれば、情報をあつかう力、タイムマネジメント力、コミュニケーション力も向上するとのことで、記憶術以外においても有益な能力が身につくはずです。ぜひ皆さんも諜報部員になった気分で、さまざまな演習を通して自身の脳のリミッターを解除してみてください。